『天使の翼』第5章(75)

 『突破するしかない』――それは、確かにその通りなんだけど……わたし達――少なくとも、わたしとダイアンは、昨日までと打って変わって、重い足取り――まるで、効果がないと分かっていながら、いやいや勉強するような、義務的な歩みで出立することになった。
 そして、昼過ぎ、にわかに洞窟の天井が高くなり、巨大なコスモス・カソリクスの大聖堂のような空間が出現し、その中央に、問題の竪穴が、直径50標準メートルはあろうか、ぽっかりと、悪魔の口腔を開いていた。
 隊商たちが、その円周に群がるようにして、次々とロープで降下していく。荷駄を運ぶ家畜たちも、特に暴れることもなく、おとなしく宙吊りにされていた……おそらく、子供の頃からこの作業に慣らされているのだろう……。ほとんどが、人力に頼るクレーンか滑車装置のようなものを使っているようで、蓄電池式のウインチを持っているわたし達は、それでもましな方なのか……
 わたし達は、人、家畜、そして商品を悪戦苦闘して下ろそうとしている隊商と隊商の間に開いたスペースを見付けて、恐る恐る下を覗き見た――ほとんど垂直に切り立った、文字通りの竪穴――悪魔の食道さながら、ゴツゴツした岩の襞や突起が、ロープで降下する隊商たちのトーチや発光器によって、おどろおどろしく照らし出されている。