『天使の翼』第5章(66)
「シャルル!……」
わたしは、はっとして、きょろきょろと周囲を見回した。
「あなたのすぐ横で、丸まって眠ってるわよ」
ダイアンが笑った。
すっかり忘れていた……わたしのすぐ横、わたしと同じブランケットに包まって、わたしにしがみつかんばかりにして、シャルルが寝入っていた……顔が火を吹くように火照った……彼は、ふさふさの髪が頬にかかって、わたし達の方に横顔を見せている。閉じた瞳のまつげが長い……
「彼、朝が弱いのね……」
困った――わたしは、ちょっと慌てた。いつの間にか、シャルルに頼りっぱなしになっていたけれど、本当にこれでは……とにかく、まず起こさなくては。
「シャルル!シャルル!」
わたしは、彼の体を、肩を、腕をぐらぐらと揺すった――こんな場合なのに、シャルルの体に堂々と触れられることに、心のどこかで官能的な喜びを感じながら……
「……ねむい……もう少し寝かせて……」
わたしは、呆気にとられた。シャルルが、いかに頭の切れる男性であり、想像もできないような権力の持ち主だとしても、その心は――そして、体もだけど――、わたしと同じ生身の人間がベースにあるということが分かったから……
嬉しいような気もしたが、今は、そんな場合ではない。
「起きて!……起きてったら、シャルル!」

0コメント