『天使の翼』第5章(63)
「君にはつらい思いをさせるけれど、もう一つ確認したいことは、
……恒星間連絡船の爆発事故はどこで起きたんだい?」
「……それは、どこか辺境の惑星で起きたとしか――」
シャルルが、鋭く切り込んできた――
「君は、今、『惑星』と言ったね」
「えっ?……辺境の……辺境の惑星……おぼろげな記憶だわ」
「たとえば、辺境の恒星、ではなかった?」
「恒星……恒星系……。違うわね。わたし、このことを思い出すときは、いつも、辺境の惑星、というふうに思い返していた気がする」
シャルルは、頷いて――
「もちろん、それは、君の思い込みかも知れない。でも、一つの手掛かりではある。――恒星系での爆発事故なら、宇宙空間での事故ということになって、今回の僕たちのケースとは、ちょっと状況が違ってくる。……宇宙空間で事故を起こさせて吟遊詩人を誘拐するなんて、きわめて困難な離れ技だ。惑星での不時着事故、そして、その後の爆発炎上……まさに僕たちのケースに酷似してくる……」
わたしは、両親のことを思わずにはいられなかった。
「あくまで可能性の中の可能性の話だけど、吟遊詩人の誘拐パターンには、レプゴウ男爵のもとへ向かおうとする……言い換えれば、レプゴウ男爵の目に留まるほどの歌い手をターゲットにした、ミロルダ誘拐コースのようなものがあるのかも知れない」
シャルルは、犯行をパターンとして捉えようとしている。
今まで、自分の両親の身に起きたことを悲劇としてしか捉えずに、具体的な探索を何もしてこなかった自分に、今更のように、わたしは、地団太を踏む……
「君の年齢から、ご両親の事故が起きたと思われる年代を割り出して、徹底的な事故の洗い出しをしてみることにしよう……もちろん、古い搭乗者名簿に、君のご両親の名前を当たってみることも同時に進める。そして、レプゴウ男爵への事情聴取だ……」
にわかに事が具体的になってきたことに、わたしは胸がいっぱいになった。

0コメント