『天使の翼』第5章(64)
両親の失踪に係わりのあるかも知れない謎の有力者から、偶然にもわたし自身が攫われそうになった可能性があること、そして、シャルルが二つの事件に切り込んで、探索の糸口を明確にしてくれたこと、その二つの大きな揺れ――心の地震が、長い間わたしの心の奥深く澱んだ、その溜池の堰を切って落とした。わたしは、物事が一気に動き出し、強い流れが生じたことを、体の外から、そして、心の中に、ひしひしと感じた。それは、両親の失踪という人生の暗い謎からじわじわと染み出していた不安が、現実的な対処可能な問題へと形を変えた瞬間だった……
その夜、眠りに落ちる直前まで、わたしは、子守唄の代わりに、シャルルの打ち出した解明への糸口を反芻していた――
⒈ ポート・オブ・ポート・シルキーズの宿泊者名簿。
⒉ バージニア・クリプトンのチケット購入者リスト。
⒊ マウリキス伯爵領の出入国管理情報から、わたしと同じ時に
あそこにいた有力者の洗い出し。
⒋ レプゴウ男爵家の武装警察に、黒いヨットの遭難状況を調べ
させる。
① 機体に手掛かりは?(遺留品)
② フライト・レコーダーは?
③ 乗員の生死は?
⒌ 白い封書そのもの、または、コピー、保安カメラの映像、支
配人の記憶。
⒍ 両親の事故が起きた年代を割り出し、惑星系で起きた恒星間
連絡船の事故をリストアップする。
⒎ 搭乗者名簿のデータが残されていないか。あれば、両親の名を当たる。
⒏ レプゴウ男爵への事情聴取
……

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