『天使の翼』第5章(61)

 「――わたしの両親の失踪については、もう一つ手掛かり……噂話に過ぎないといわれればそれまでだけど、吟遊詩人仲間に広がった風聞があるの」
 「……」
 「両親は、恒星間連絡船の爆発事故でなくなった、というのよ」
 シャルルは、目を見開いた。
 わたしは、頷いて――
 「失踪した両親と、危うく失踪した吟遊詩人の仲間入りをするところだったわたし――二つのケースの間の共通点……それは、何よりもまず、母もわたしと同じ吟遊詩人だということ。危険な白い封書の招待があったと思われること。そして――誘拐の現場が、共に宇宙船だと考えられること……父と母の乗っていた恒星間連絡船は爆発事故を起こしたと伝えられ、わたしの乗っていたスペース・クルーザーは、現に襲撃を受け不時着した」
 「……白い封書の招待があったということは、君の母上も、犯人である有力者に歌う所を見られていた、ということになるな」
 「――まさか、ポート・シルキーズで?」
 「おおいにありうることだ。二十年、三十年前には、ポート・シルキーズは、もうきわめて有名な観光星になっていたからね。もちろん、犯人は、他にもいくつか狩場を持っている……ごめん、ひどい言いかただった……」

 「いいのよ」
 「……ポート・シルキーズは、いくつかある狩場の一つに違いない。首都アケルナルから近いことも、有力者にとっては好都合だ」
 わたしは、シャルルにすがりついた。
 「教えて頂戴!二つのケースは、同一犯と言い切れるの?」
 シャルルは、じっとわたしの瞳を見詰めてから、告げた。
 「推理を積み重ねていくと、ある段階を超えたところで、理屈や確率などとは無関係に、直感が語りかけてくることがある――ある者は、それを、捜査官の第六感と言ったりする」
 「……」
 「同一犯の可能性は、きわめて高い。君のおばあ様が君の無意識に植え付けた記憶、それは、言わばおばあ様の供述調書だ――僕には、これは、動かぬ証拠に思える」
 わたしの肩がぶるぶると震えだした。