『天使の翼』第5章(57)

 ……白い封書……白い封書の招待状……白い封書の武装ヨット……
 シャルルの話を聞きながら、わたしの意識は、ぐるぐると白い封書の上を回っていた――シャルルから話を持ち出されるまで、全く意識していなかったのに……まるで、呪縛という名の密閉容器のふたが取れたようだ……
 白い封書……カチリ……
 白……カチリ……
 ――白!
 わたしの頭の中で何かが炸裂した!
 (ホワイト!)
 ――白い封書と、夢の中の祖母の言葉「ホワイト」とが、まるで無数のニューロンによって接合されたかのように、電撃が走った!
 わたしの顔に浮かんだ驚愕の表情に気付いたシャルルが、ブランケットから半身を起こして、わたしの顔を覗き込むようにした。ブランケットの隙間から冷たい空気が吹き込み、わたしは身震いした……
 わたしは、手でそっとシャルルの胸を押した――全宇宙の共通語、「ちょっと待って」という意思表示……

 ……白い封書の「白」、そして、ミロルダへのワープ航法のさなかに突然啓示された祖母の言葉「ホワイト」――その二つのイデアが、実は同一のもの、一つのイデアとしてわたしの頭の中で結び付いた。――わたしの心の中で、胸騒ぎのようにカチリ、カチリと音を立てていた何かは、実は、異なった状況下――一つは招待状という名の封書、そしてもう一つは夢の中の祖母の言葉――に置かれた一つのイデアの二つの分身が、お互いに引かれあって放つ火花のようなものだったのだ。
 ――わたしは、確信した。