『天使の翼』第5章(42)

 「どうやら、三日でレプゴウの城下に行けそうだ」
 シャルルが、明るい表情で帰ってきた。
 『三日』というのは、この今の状態がいつまでも続くような気がしてきたところだったので、正直言って、その程度で良かったという感じ……
 「――つまり、食料は足りるって事だ。……もう一つ、この洞窟なんだけど――」
 「平らじゃないんでしょ!」
 ダイアンに先を越されて、わたしは、少々むっとした――最近、わたしの心は、大人気ない反応を示すことが間々ある……
 「鋭いね、ダイアン」
 「違うのよ、シャルル。さっきあやしげな機械の行商人が来て、この先にとんでもない竪穴があると教えてくれたのよ。お姉さまが、ウインチを買ったわ」
 わたしは、心の中で舌打ちしていた。これじゃあ、わたしは、あやしげな行商人から言い値でおんぼろ機械を買う、軽率な女ということになってしまう……よく考えたら、実際にそうなのだ。わたしは、腹が立って腹が立ってしょうがなかった。むくれた表情が顔に出ても平気だった。

 シャルルは、自分のいない間に一体何があったのかと、わたしの顔をのぞき見てから――
 「大丈夫さ。使う前にちゃんとチェックするとしよう」
 (何が『大丈夫さ』よ!)
 誰も大丈夫じゃないなんて言ってないのだ……いかにもシャルルらしい一言だし、そんなつもりで言ったのではないのは分かっても、わたしの気持ちは、どんどんずたずたになっていく……