『天使の翼』第5章(43)
その後も、食事の間中、ダイアンはシャルルを独占し続け、そのシャルルに釘付けのとろんと潤んだ瞳が、癪に障ってしょうがない。一方のダイアンが、わたしが急に無口になってむすっとしていることに全く無頓着なのも、わたしの気持ちをじりじりと苛立たせる。
シャルルが時々優しい視線を向けてくるのだが、わたしは、まるで子供のようにむくれて見せた……わたしは、自分の気持ちがコントロールできず、感情のおもむくままに流されていく……なんてこと!その時のわたしは、自分が天使に叙任された女であることなど、すっかり忘れ果てていた。
……一つだけ、意外というか、感心したのは、ダイアンが、実は、ICS社の社員ではなく臨時雇いで、本業は、アルクトゥールス帝国大学経済学部の学生だということだ……
針の筵のような食事を終え、いざ寝るという段になって、意外な展開が待っていた。
「ブランケット、2枚しかないんでしょ。悪いけど、私、滅茶苦茶寝相が悪いんで一人で使わせてもらうわ……シャルルとデイテは姉弟なんだし」
それを聞いて、わたしの胸の鼓動が、急に早まった。どきどきしているうちに、反論している間が逃げていった……
(いくら姉弟だからといっても……)
わたしとシャルルが、もじもじと雑事にとらわれている振りをしているうちに、ダイアンは、安らかな吐息とともに寝入ってしまった。

0コメント