『天使の翼』第5章(39)
未知の惑星の独特の文化に接すると、これでもここは銀河帝国なのかしら、などと思ったりするが、そもそも、帝国とは、その支配の確立のプロセスがどうであれ、共通の上部統治機構を持つ異民族・異文化の集合体なのだから、均質な文化を前提とすること自体間違っているのだ。
わたし達は、疲れも吹き飛ぶような驚きに目を見張りながら、洞窟の奥へ、奥へと進んだ。
いくつもの隊商が、思い思いの場所で、あるいはもう眠りにつき、あるいは食事にありついていた。……子供から老人まで、あらゆる年代の人々、みたこともない奇抜な衣装、エキゾチックなスパイスの香り……
わたしのお腹がグーと鳴った。
「そろそろ食事にするか」
周囲の人々の立てる音で、わたしのお腹の訴えが聞こえたとも思えないのだが、勘の鋭いシャルルが、わたし達の方を振り返った。
わたし達は、壁龕の様になった、テーブル状の岩の上で宿営することにした。
わたしとダイアンが簡単な食事の準備をすることになり、シャルルは――
「ちょっと情報を集めてくる」
と言って、ひらりと岩棚を飛び降り、たちまち洞窟の奥へと消えていった。

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