『天使の翼』第5章(22)
……よく考えたら、いつの間にか、一介の吟遊詩人にすぎない――わたしの弟という触れ込みの――シャルルが、リーダーシップを取っている。頭がいっぱいだからだろうが、ダイアンも含めて誰もそのことを気にしてない……。人間、本当の危機に追い込まれると、真に力のある人が自然とリーダーシップを取り、周囲も何の抵抗もなく自然とそれを受け入れるということだろうか。――危機的状況の中で冷静さを失わずに、的確に状況判断を下して、最適な方向を指示してくれる人ほど頼もしいものはない――
その時だった――鋭い稲妻のような光が、船窓の外を走った……レーザー砲だ!
船尾方向を見ると、黒い船が、船体に隠されていた砲塔をすべて剥き出しにして、まるでハリネズミのような有様で、わたし達の船を追って来ていた。
彼らは、あくまでわたし達を生け捕りにするつもりだろう、決してレーザーを当てようとはしなかった。そのかわり、レーザーの威嚇でわたし達の船の前進を阻もうとしている――わたし達の船は、大きな円を描いて同じところを回るように仕向けられている……黒い船の連中は、わたし達の船が、どこか市街地の近くに不時着することを阻止しようとしているのだろうか。だとすれば、彼らは、レプゴウの領星についてある程度土地勘があるということだ……
「僕が黒い船なら、次は撃ってくるぞ」
だしぬけにシャルルが叫び、わたしとダイアンは、彼の方を顧みた。

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