『天使の翼』第5章(23)
「船体に致命的ではない打撃を与えて、不時着せざるを得ない状況に追い込もうとするはずだ……。ダイアン、この船に武器の備えはあるか?」
「……あるにはありますが、小火器が……。ニードル・ガンが2丁操縦室にあります」
(窓を開けて、ニードル・ガンの針を黒い船に向けて発射するの?)
――わたしが不謹慎なジョークを口にして飛ばそうとした刹那――
パン!と、風船の割れるような音と同時に、船体が激しく揺らいだ。たちまち、船内は方向の定まらない気流の渦と化し、飲み物のカップのようなかなり重い物まで吹き飛ばされていく――見ると、客室後方の天井に人間が一人通り抜けられる位大きな穴が開いていた。
もう、この船が宇宙に勇躍することは、二度とないのだ。それどころか、わたし達の船は、船体に開いた穴のおかげで、操縦がきわめて困難になり、徐々に高度を下げている……
このまま不時着しては、たとえ着陸に成功したとしても、たちまち、わたし達の船の隣に黒いヨットが垂直降下して、わたし達は、囚われの身に――
耳をつんざく爆発音!
同時に襲ってきた衝撃波に、わたし達のクルーザーは、小さな羽虫のように吹っ飛んだ!

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