『天使の翼』第5章(21)

 再び彼らに捕捉される前に、何か手を打たなくては……どうすればいい?
 わたしは、シャルルの考えを聞こうとした――その時、ダイアンが、わたし達の方を振り返った――彼女は、いつの間にかヘッド・セットを装着して、操縦席と連絡を取り合っていたようだ――
 「デイテ、シャルル――」
 いつの間にか呼び捨てになっているけど、今はそんなこと言っている場合じゃない。
 「――問題が二つあるの」
 「……」
 「まず、通常燃料がもうない。――そして、着陸装置が作動しない――」
 「垂直に降下すれば、たいした問題にはならないんじゃないか?」
 シャルルが、間髪を入れず口を挟んだ。
 「ごめんなさい――肝心のことを言ってなかった……垂直方向の噴射口が破損して使えないの……点火したら、この船火達磨になるわ」

 ――つまり、古代の飛行機械のように、水平に地表に向かって突っ込んでいくって事ね。 ……車輪なしで。
 「着陸可能な十分な距離のある平坦な地表を見付けたら、迷わずそこに着地した方がいい」
 シャルルの決断は、早かった。今や生きて地表に降り立つことが最優先となったのだ。早く着地することが、黒い船からの遁走にもつながることは、言うまでもない。
 ダイアンは、シャルルの考えを操縦室へと取り次いだ。しばらくして振り返り――
 「航宙士も全く同じ考えです……不時着ということになりますから、ベルトはきつく留めてください」