『天使の翼』第5章(20)
その時、ダイアンが乗務員室から戻ってきた。
「大気圏に突入します!」
わたし達三人は、慌ててシートにつき、ベルトを装着した。
ほとんど同時に船窓が自動的に遮光化した。
船体がガタガタと揺れだし、それは、あっという間に、今にも空中分解しそうな激しいものになった。ピーン、ピーンと船体の前から後ろに、目に見えるような金属音が走る。遮光化したはずの窓は、まったく効果なく、灼熱の炎を直に見ているのとなんら変わらない。
……わたしのような素人にも、手動で大気圏に突入したのだと分かった。いかに船体が強靭でも、非常の際の最後の手段としてしか認められていない。とても最適な軌道計算だとは思えなかった――今にもはじけ飛びそう!――わたしは、必死に悲鳴をこらえた――
そして、それは、突然終わった。
窓が見えるようになり、振動が嘘のようにおさまった――見かけの飛行状態だけは、快適なスペース・クルーザーそのものに――。眼下には、荒涼としたミロルダの地表面が見える。まるで、一面溶岩流に覆われたような、ゴツゴツとしてでこぼこの赤と黒の世界……
わたしとシャルルは、四方の窓から外を窺ったが、黒い船の姿は見えない。――黒い船は、自動で余裕で大気圏突入を果たしたのだろうか?彼ら(?)には、わたし達に付き合って危険を冒す理由はまったくないのだから……

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