『天使の翼』第8章(49)

 「僕は、今度のミッションに出る前に、サンス大公国に関して、調べられるだけの事は調べたつもりだ――」
 シャルルは、ちらちらと聖堂の閉ざされた扉の方を見ながらも、答えてくれた――
 「――デラ公女は、サンス大公の第一子で、女性ながら、女大公……後継者と目されている。直系の男子もいるにはいるのだけれど、資質の点でとてもデラ公女に及ばない。デラ公女は、きわめて行動主義的な、右翼、国粋主義者で、彼女が――ある意味で父以上に――銀河帝国の転覆を狙っているとしても不思議はない、と報告書の一節にあった……」
 「……」
 「でも、実際彼女がどのようなメンタリティーの持ち主で、どのような正義感を抱き、何を悩んでいるのか……そして、実際、どの程度の政治的・軍事的冒険をする覚悟があるかは、彼女をもっと知らないことには、何とも言えないな……」
 わたしは、束の間、乾いた、焦燥のようなものを感じた。