『天使の翼』第8章(37)
わたし達は、誰もいないスカイ・ポートに戻った。
まず、船内を再チェックする。誰かが戻っているとも限らない……
安全を確認したわたし達は、再度船外に出て、わずかだが散っていた血痕に砂をかけ、黙々と応急の手当てをした。
「……僕としたことが……一つ気付いたんだが……」
わたしは、思わず緊張してシャルルの顔を見た。
「スカルラッティがあの時の悪の手下を迎えによこしたということは、ぼくらが何者であるか気付いていない、ということだ……」
確かにその通りだ……
「――その一方で、普通の部下ではなく、悪の手下を送ってよこしたということは、やはり、スカルラッティは、僕らのことを勘繰っている……自分の犯罪の被害者の身内と思ったか……それとも、君に興味を抱いたのか」
わたしは、身震いした。
いよいよ状況が切迫してきた。
「エアバイクで行くしかないな」
シャルルが言った。
「――僕は、一等戦闘艦艇航宙士の資格を持っている――」
わたしは、査察官としての訓練でシャルルがどのような技能を身に着けているのか、もう何を聞いても驚かない心境だった……さしずめ、先刻のナイフの技は、一等白兵戦戦闘士の資格ってとこだろうか――
「――スペース・ヨットを操縦していくこともできるけれど、それでは説明のしようがない……待ち合わせの場所に行ったら、ヨットだけあって、乗組員がいなかった、ということにしよう」
かくして、わたし達は、日の没したウラールの森を村へと取って返して、エアバイクにまたがった。秘密を抱えて大勢の人で賑わう村へ戻るのは嫌だった――ジェーンと鉢合わせする可能性だってある――けれど、他にどうしようもなかった……どうも、最近選択の余地がない状況が増えてきている……。数人の若い女性がシャルルに気付いて嬌声をあげたけれど、わたし達は、他に何事もなく脱出できた。
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