2017.02.26 15:47『天使の翼』第7章(42) 「どうやってスカルラッティに近付く?何か近道はないかしら……」 わたしは、このちょっとした沈滞ムードを打破しようと、当面の課題に話を振った。 「スカルラッティに僕らの歌う姿を見てもらう、というのが大前提だ――それ以外に接近法はない」 「いっそ、スカルラッティの居城に乗り込む?」 シャルルは、笑いこそしなかったものの、肩をすくめて―― 「それだと、いかにも見え透いている。何と言っても、相手は帝国宰...
2017.02.22 15:45『天使の翼』第7章(41) 「……そして、『少なからずや、ご返事だけでも』……駄目な場合でも返事だけは欲しい……一見しただけでは、切実な思いを読む者の心に訴えかけようとしているようだけど、返事をするには、待ち合わせの場所に行かなくてはならない訳で、胡散臭さがにじみ出ている――」 わたしは、この手紙に隠されているものが見えてくるような気がしてきた。 シャルルが、突然目を見張って、わたしの顔を見た。 「キリヤック伯爵というのは...
2017.02.20 05:06『天使の翼』第7章(40) わたしとシャルルは、しばし文面と睨めっこをした。 「この文面は――」 シャルルが先に切り出した。 「――男爵の言っていた他の吟遊詩人宛の招待状と内容の特徴が一致する。 第一に、待ち合わせ……と言うか、誘拐の日時・場所に、何の変哲もない手近のランドマークを選んでいる。 第二に、この招待状の差出人を特定するのに役立ちそうな固有名詞・天候等も含めた時事的な内容は、一切含まれていない――」 「『キリヤッ...
2017.02.16 07:31『天使の翼』第7章(39) 「まずは、僕たちも、文面を見てみよう」 シャルルが、バーチャル・コンピューター上の擬似画面にPOPSで回収した招待状の中に入っていた用箋を呼び出した。 ――用箋は、一枚。 封書の宛名書きが黒々としたインクの手書きだったので、無意識のうちに期待していたわたしは、少々がっかりした――短い文面は、活字を印刷したものだった…… わたしの表情の変化を敏感に感じ取ったシャルルが言った。 「これを印刷したパー...
2017.02.13 10:10編集方針変更のお知らせ いつも当サイトをご訪問いただき、誠にありがとうございます。 この度、当サイトの重複のあるページ、長らく休止しているページを中心に、下記の通り改訂することとなりましたので、お知らせいたします。 (1) Ownd版『天使の翼』の「Effects in the Dream」ページは、「Photo『天空のエクリチュール』」ページと内容が重複しており、その役目を終えたものとして、即時廃止いたします。 (2...
2017.02.13 03:43『天使の翼』第7章(38) シャルルは、万全を期して、一連のコマンドを打ち込んだ――男爵から借りた白い封書のデジタル画像と、消耗備品課のリスト上の白い封書を照合するのである。 程なく結果が出た――90・3%合致……これは、消耗備品課の画像がさほど高画質でなかったことを考えれば、とても高い数値だった。 わたしとシャルルは、しばし押し黙っていた。 ……わたしの両親を誘い出すのに使われたと思われる白い封書……わたしをPOPSから...