『天使の翼』第7章(42)

 「どうやってスカルラッティに近付く?何か近道はないかしら……」
 わたしは、このちょっとした沈滞ムードを打破しようと、当面の課題に話を振った。
 「スカルラッティに僕らの歌う姿を見てもらう、というのが大前提だ――それ以外に接近法はない」
 「いっそ、スカルラッティの居城に乗り込む?」
 シャルルは、笑いこそしなかったものの、肩をすくめて――
 「それだと、いかにも見え透いている。何と言っても、相手は帝国宰相だからね。いきなり乗り込むのは、とても無理だ……かといって、いつまでも手をこまねいてはいられない。スカルラッティが在国している今しかチャンスはない。多忙な帝国宰相がいつアケルナルに上京するか、時間の問題だ……」
 ……わたしは、焦燥を感じると同時に、ぐったりするような疲労感を覚えた。思考も鈍ってくる。
 シャルルの顔の表情もさえなかった。
 ――スカルラッティが臨席することの確かなイベントのようなもので歌う……まずは、そのようなイベントに出られるよう巷で名を売る……
 それ以上の考えは出てこなかったけれど、わたしは、それを、わたし達の探索がいよいよ、最後の行動の段階に達したのだ、と考えることにした。