タイムマシンが実現すると歴史家が失業する

『ハッシュタグ狂詩曲(#Rhapsody)』第22話
 テーマ:タイムマシンがあったら過去と未来、どっちへ行く? 


 SFを書いているわたしにとって、もともとタイムマシンと言うのは身近な存在だったけど、最近の科学的知見によれば、タイムマシンは原理的に実現可能だという(これに関連したブログは科学の進歩と人間の欲望~『ハッシュタグ狂詩曲(#Rhapsody)』第16話~)。
 『タイムマシンがあったら過去と未来、どっちへ行く?』と言う設問は、わたしにとっては、普通の人よりも現実味を帯びたものなのだ。決して夢物語ではない……


 だから、現実的な問題を考えてしまうわたしは、決して未来に行きたいとは思わない。
 いつであれ、どの程度先の未来であれ、未来を見てしまって、心の平静を保っていられるか、全く自信がない。タイムマシンに乗って未来に行くということは、言ってみれば『予知能力』を獲得するようなもので、わたしは、およそあらゆる能力の中で、予知能力ほど人の心を破壊してしまうものはないと思っている。予知能力者は、未来に縛られ、将来に何の喜びも見いだせず、運命論的な人生観に支配された受け身の人生を送ることになるだろう……


 その点、過去は、そこにどのような秘密が隠されているにせよ、その秘密を知ろうが知るまいが、既に決定されている『現在』に変化はないから(『秘密』を知ったことによって、将来的な対応に変更はあるかも知れないけど)、わたし的には、心安らかにタイムマシンに搭乗できる。


 目的は、もちろん、過去の歴史をこの目で確認すること!!


 歴史に書かれていることが、どこまで真実で、どれだけ実際とかけ離れているのか、あるいは、全く知られていない重要な事実が埋もれていないか?
 歴史でしか知らなかった世界が、生活が、実際にはどのようなものだったのか?
 ……


 古代エジプトのファラオの一日は、どのようなものだったのか?
 ある日のルイ十四世の姿は?
 フランス革命最中のパリの一日は?

 ……


 知りたいこと、見たいものは山ほどある。
 もしそれが本当に実現できた時、もう歴史家はいらない。


『天使の翼』作者:有川慶子




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