『天使の翼』第5章(45)
わたしは、今の冷たい返事を、どうしても修正しなくてはならない状況に追い込まれた……そして、もうどうにでもなれ、という気分に……
「あなたが好き」
ブレーキが外れたように、言葉が飛び出していた。
わたしは、寝返りを打って、慌ててシャルルの方へ向き直った。
シャルルは、真っ直ぐ洞窟の天井の方を見ながら、その肩の辺りが、緊張して硬くなっているのが見て取れた。
考えてみれば、シャルルが『今付き合っている女性はいない』と言ったのは、別に、イコールわたしのことが好きという意味ではない……単に、同じブランケットの中にくるまることになったわたしの気持ちを軽くしようとしただけ、ともとれる。それなのに、わたしは、一気に飛躍して、自分の心の奥に根ざした、最も大切な気持ちを、無造作に言葉にして、彼にぶつけてしまったのだ……
もっと適切な場面で、心をこめて伝えるべきだった気持ちを……
(わたしは、驚くべきせっかちだ!)
一目見たときからわたしの心に彼に惹かれる気持ちがあったのは確かだけど、恋の告白としては、間違いなくわたしの最短記録だった。もし、シャルルが、わたしのことを特別な女性として意識していなかったら……わたしは、大変な過ちを犯してしまった。彼の気持ちを良く考えもせず、いくら疲れていたとはいえ、大事な任務の最中に、一方的に重たい気持ちを告白してしまった……
(シャルルがあんまり優しいから……)
わたしは、恥ずかしくて、みじめで、絶望的な気持ちで、審判の時を待った。
……

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