『天使の翼』第5章(29)
「……左側の男性には、手が届かなかった――」
シャルルが、言いにくそうに告げると、ダイアンは――
「いいのよ、ありがとう」
シャルルは、ほっとため息をつくと――
「何か使えるものがないか、船内を見てくる……そうだ、操縦席から回収できたのは、これだけだ」
上着の下から、2丁のニードル・ガンを取り出した。
わたしは、差し出されるまま、無意識のうちに、そのうちの一丁を受け取った。
もちろん、手にするのは初めてだし、使い方も分からない。知っているのは、ニードル・ガンが、人間位のサイズの生き物には抜群の抑止力を持つ、警察権を有する官庁では標準装備の武器だ、ということくらい……この武器は、ニードルが相手の急所に命中したとき、そして、散弾モードでニードルを連射したとき、相手の命を奪う……
わたし達は、気力を奮い起こして立ち上がると、皆で客室内を捜索した。
意外というべきか、当然の帰結というべきか……未知の惑星ミロルダでわたし達のサバイバルに役立ちそうなものは、ほとんど何も回収できなかった。――船内調理室(ギャレー)にあったわずかばかりの食糧――シャルルは、それを3日分と算定した――、防寒用ブランケット2枚、子供のおままごと用としか思えないが、それでも救急用薬品を含んだ、小さな小さなサバイバル・キット1セット……。水だけは持ちきれない程あったが、今にも降り出しそうなミロルダの環境では、いくらでも調達できそうなものだ。幸いなことに、わたしとシャルルの手荷物――といっても、肩掛けバッグとギターだけだが――は、無事回収できた。
わたし達は、三人で荷物を割り振り、最後にもう一度機体に向かって黙祷をささげてから、砂地を後にした。

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