『天使の翼』第5章(27)

 そんなことを思ったのは一瞬のことで、わたし達三人は、すぐにハッチを飛び出した――たちまち、予想外のむっとするような湿気に包まれた。気温は、高くもなく低くもなく、銀河標準20℃位か……
 わたし達の船の船首は、地盤から直接生えたようなごつごつの巨岩に突き当たって、もとの容積が分からなくなる位押し潰されていた――絶望感が走る……
 ダイアンが、足から力が抜けるようにその場にくず折れた。
 わたしも、とても航宙士の安否を確認する気にはなれず、その場に石のように凍り付いてしまった。
 シャルルだけが、この状況に対応すべく手を打っていく――まず、携帯端末が繋がるか確認――当然予想されることだが、この荒野は全くの圏外で駄目――ちなみに、ワーム・ホール回線は、ワープ・ステーションまでしか来ておらず、そこから先は、通常の衛星と電波塔を使った回線である。よく自分の携帯端末が直接ワーム・ホールと繋がっていると勘違いしている人がいるけれど、そんな訳はないのである。次いで、シャルルは、彼らしい責任感にかられて、船体の亀裂から中にもぐり込んでいった……いつの間にか吹き始めた風の音にくるまれて、わたしとダイアンは、時の流れの中に取り残された……