『天使の翼』第8章(39)

 エアバイクを地上に降ろして待つ間もなく、わたし達のバイクの前後を挟むように急降下した、メタリックシルバーの新車と思しいエアカーから、ばらばらっと五、六名の搭乗員が降り立った。何と、彼らは、僧官――僧兵だった。全員が、ニードルガンが子供の水鉄砲に見えるような必殺の物々しい銃器を構えており、わたしは、何もする前に逮捕されるのではと緊張した。
 「名乗られよ」
 そう言って一歩進み出たのは、指揮官らしき中年の僧だ。
 「シャンタルとチャールズ、大司教様のお招きで参上いたしました」
 とっさに、わたしは答えていた。――吟遊詩人であることは、言わずとも、わたし達の姿から分かるはず……
 僧は、頷いて――
 「我々の手元のリストでも確かにそうなっている」
 わたしはほっとしたが、それも束の間――
 「……ですが、あなた方には、当方から特別にヨットを仕立てたはず?」
 「待ち合わせの場所に行ったのですが、誰もいなかったのですよ」
 シャルルが淀みなく答え、わたしは、救われた。
 「何と……ハッチは開いてましたか?」

 そこは、さすがにプロらしい鋭い質問だ。
 「開いてました――」
 シャルルは、平然と答えた。
 「――声もかけてみたのですが、誰もいないみたいで。しばらく待ってはみたものの、晩餐の時間に遅れてはかえって失礼と思い、バイクを飛ばしてきました」