『天使の翼』第8章(32)

 「一つには、僕らがどこまで実態を把握しているのか吐かせた上で、これ以上騒がれないように抹殺しようとするだろう」
 直接言葉にして言われると、やはりショックだった。
 「もちろん、何もせず、放っておく手もある……僕ならそうするね。ばれるはずがない、何事もなくこの星を去ってもらうのが一番だ、と考えるだろう」
 「……どうすればいいのかしら?」
 シャルルは、軽く頷いてから――
 「その前に、スカルラッティが、シャンタルとしての君に興味を抱いて、君を、そしてもちろん僕も一緒に誘拐する可能性があることを忘れないで」
 もちろん、そうだった――最も単純明快なケース……
 「こういう色々な可能性の考えられる時は、原因と結果を分けて考えるしかない」
 「『原因と結果を分ける』?」
 「そう。因果関係を辿っていては、頭が混乱するだけだから、どんな場合にも対応できる行動パターンを予めシュミレーションしておくんだ」
 わたしは、どんな場合にも不意打ちを喰らわないよう、予め心の準備――というか、整理をしておくシャルルの姿勢に感心するほかなかった。
 「――第一のポイントは、スカルラッティは、程度の差こそあれ、僕らの存在に、何か普通でないものを感じているはず。そして、それを確認しようとするだろうし、どこかの時点で結論に達するだろう」

 「……」