『天使の翼』第6章(20)
前に、ミロルダに向かうスペース・クルーザーの旅でも感じたことだが、どんな困難な状況にあっても、そこに活路が――方向性がはっきりと定まっていると、人は、意外と安らかな眠りを得られるものだ――わたしの場合は、ワープ航法で飛んでいる時は、熟睡こそできないけれども――。
わたしは、宮殿の最上階に近い、客間の寝具に横たわり、安らかな眠りの予感に包まれながら、高い天井を見上げていた。明かりは、窓からもれてくるミロルダの月明かりだけだ……できれば、窓を開けて、夜風を入れたいところだが、すぐ身近に悪の手下共がいるかも知れない状況では、ちょっと無理……あらためて、自分が危険の真只中にいることが、不思議に思えてくる……
わたし達は、明日一日休養をとって、明後日の朝旅立つことに決めてあった。旅立つ前、明日の夜、男爵に歌を披露する。
わたしの横の寝具で、わたしの弟ということになっているシャルルが寝返りを打った。彼は、とても寝付きがいい。……つい先ほどまで、わたし達は、今日得た情報をもとに、前に立てた探索の方針を再検討していた。
まず何よりも、スカルラッティという具体的な名前がある、ということだ――
⒈ ポート・オブ・ポート・シルキーズの宿泊名簿の中に、スカルラッティの名はないか?
⒉ バージニア・クリプトンのチケット購入者リストの中には?
⒊ マウリキス伯爵領の出入国管理情報には?
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