『天使の翼』第6章(19)

 わたしは、若き男爵の誠意に答えなくてはと思った。それは、この場合、もう少し、もう少しだけ踏み込んで、わたし達の秘密を打ち明けることに他ならない。シャルルの顔を見ると、以心伝心で頷き返してきた。
 わたしは、改めて男爵の視線を捉えた。
 「殿下、実は、わたしの両親、父と母が、何年も前に行方不明となっています。今回わたし達が襲われたのと同じような状況、恐らく、同じ犯人によって……」
 男爵は、目を見張った。
 「そうでしたか」
 そこで、わたしは、もう一度シャルルの顔を見た。シャルルは、わたしの目を見て再び頷いてくれた――
 「わたし達、わたしとシャルル、二人でスカルラッティの領星へ行ってみようと思います!」