『天使の翼』第5章(87)

 「改めて、お詫び申し上げる」
 指揮官が、深々と頭を下げた。
 「男爵殿下の御所望で遠い所をミロルダ星まで来ていただきながら、宇宙賊に会われるとは……我がレプゴウ領内をそのような輩が跋扈するとは、お恥ずかしい限り――」
 「僕たちの乗っていたチャーター便から通報が行ったのですね」
 シャルルが、なにやらメモを取りながら聞いた。
 「はい、第一報は、ワープ・ステーションからでしたが、それを受けて緊急出動した我々のもとに、あなた方のスペース・クルーザーからの緊急通報が入り、我々は、すぐにレーダーを使った追尾に入りました――」
 わたしの脳裡を、銀色の機体を優雅に煌めかせた、テナー大佐の――恐らく――スペース・クルーザーの勇姿がよぎった。
 「レーダーの機影は、2機ですよね?」
 シャルルも、わたしと同じ疑問を持ったようだ。もちろん、彼は、テナー大佐の存在は知らずにだが……
 「ええ。あなたがたのと、そして、宇宙賊のスペース・ヨットです……何か?」

 「いや、スペース・ヨットがもしやステルス化されていたのではと……」
 シャルルが、うまくはぐらかした。――これで、テナー大佐機――これはもうわたしの確信だ――がステルス機であることが確実となった……
 「その後間もなく――」
 指揮官が続けた。
 「――レーダーから2機の機影が次々と消えて、何か尋常ならざる事態が……つまり墜落ですが、出来したことが分かりました。この段階で、宇宙部隊から、地上部隊に属する私が、捜索を引き継ぎました」