『天使の翼』第5章(25)

 シャルルが、わたしの方を振り返った。
 このことは、シャルルにも言う訳にはいかない――約束した秘密だ……
 シャルルは、わたしの顔色から何かを読み取ったのか、無言だった。
 ダイアンだけが、物問いたげに口を開きかけたが、彼女のヘッド・セットがその隙を与えなかった――
 「……平坦な砂地が見付かったわ!緊急着陸します」
 ……その後のことは、恐怖でほとんど時間感覚が失われている――船もろとも木っ端微塵になる恐怖――現実的な痛みを考えて身のすくむ思い……ちらりと見た窓外の光景は、猛烈な速さで後方に流れ、とても焦点が定まらない。失速した方がまし、などと埒もないことを考える……
 そして、わたし達の船は、ミロルダの地表にスライディングした。
 激しくバウンドして、船腹をぼこぼこにしながらも、すぐにはスピードが落ちず気が気ではない。
 平坦とはいっても、それは周囲の露出した岩盤と較べてのことで、
 実際には起伏があるし、暗礁のようにぎざぎざの岩が突き出たところもある。

 わたし達の船は、ガシャンと金属の押し潰される不吉な音と共に、ようやく動きを止めた……宇宙からの帰還というよりは、自分が隕石にでもなったような感じ……