『天使の翼』第5章(16)

 祖母の夢こそもう見なかったけれど、熟睡できないわたしは、つまるところ夢の中を漂うしかなかった。何の脈絡もない夢の連続の中で、物思いに耽っていたようなものだ……もちろん、その思考の糸はぷつぷつと途切れて、一つの形にまとまることはない……。わたしのような宇宙の旅人は、こういった空き時間をどう過ごすか、いつの間にかそれぞれの流儀を編み出すものだが、わたしの場合は、――もちろん――夢の中で作詞作曲することにしている……曲の断片しか作れないけれど、あとで起きた時にこれを思い出すことができると、これが、意外な新しい試みだったりするのだ。
 その時のわたしも、確かそんな状態だった。
 そして、いきなり現実に引き戻された。
 ――何か大きな衝撃の波といっしょに近付いてくるものが……
 目を開いたわたしは、一瞬、その予感が、着三次元ステーションのリングを抜け出た衝撃かと思った。
 船窓の外にそそり立つようなワープ・ステーションの向こうに、大陸面を赤黒く恒星に照らし出された惑星――ミロルダに違いない――が、はっきりと見える。

 シャルルは、既に目覚めて、窓の外の光景に見入っている……
 スペース・アテンダントが、前方の操縦室につながる扉を開けて、にこやかな笑顔とともに入って来た時だった――
 わたし達のクルーザーの船体後方に、何か巨大なものがぶつかったような衝撃が走った。
 スペース・アテンダントが顔を歪めて床に崩折れた。
 幸い、と言うべきか、聖薬検査所までまだ距離があり、シートベルトは緊縛モードになっていない。わたしは、ベルトを外し、船体後方の見える窓に走った。
 シャルルも、わたしと同じ判断を下し、わたしの後ろに付くと、首をねじって、二人して船尾方向を見る――
 わたし達は、愕然とした!