『天使の翼』第8章(17)

 「――しばらく会わないようにしよう」
 わたしは、その言葉を聴いて、その『しばらく』が、結局、このまま別れることになってしまうような予感がした。
 「分かったわ……」
 言いながらも、見る間にまた、ジェーンの瞳からポロリ、ポロリと涙があふれだしてくる……
 「……私も気持ちの整理をしたいから――」
 次の瞬間、ジェーンは、顔をくしゃくしゃにして泣き崩れてしまった――泣き崩れるといっても、立ったまま、溢れ出す涙をどうしようもできずに……
 シャルルが、わたしの方を見た。
 わたしは、それが何であるか、頭で理解する前に頷いていた。
 シャルルが、ジェーンをぎゅっと抱きしめた。
 ジェーンも、泣きじゃくりながら、シャルルにしがみつく……
 ……わたしがちょっぴりじりじりしだした頃、ようやく、ジェーンがシャルルの胸から顔を上げた。
 「チャールズとシャンタルさんて、どうしてこんなに魅力的なの?わたし、ほとんど会ったと同時に、あなた達に引かれていた――」
 わたし達は、二日前に会ったばかりだった……

 「――シャンタルさん、チャールズ、お二人は、只者じゃないわ!」
 この問いには、まともに答える訳にはいかなかった。
 わたし達は、感謝祭の最終日に会うという約束――果たせるのだろうか?――をして別れた。