『天使の翼』第8章(15)

 わたし達は、その後、しゃべることよりも思い煩う事の方の多い、ともすれば黙しがちの食事を終え、軽い練習をした。
 練習といっても、シャルルが、歌詞を練りたいと言って、わたしがギターで曲を弾いたのだ――シャルルは、目を瞑って何やら口をもぐもぐさせていた。そして、いきなり、兄の写真を見せてくれ、などと言い出した。もちろん、わたしは、それがシャルルの創作活動の足しになるのならと、喜んで見せてあげた――
 「君にそっくりだ!」
 シャルルは、驚いて大きな声を出した。
 「先のことだけれど、僕たちが使命を果たした暁には、休暇をもらって、ケイン――兄上を探しに行こう」
 わたしは、突然の申し出に面食らってしまった……何と言っていいのか分からない。彼の顔を見ると、じっとわたしを見詰め返す彼の瞳は、いたって本気なのだ……何だか、シャルルの知恵を持ってすれば、本当に兄に会えるような気がしてくる。何だかとても幸せな気持ち……深く考える間もなく、わたしは、シャルルに抱きついていた。
 「ゴホン!」
 その咳払いに、わたしもシャルルも、飛び上がって驚いた。
 見ると、シスターの制服に着替えたジェーンが、腰に手を当てて、まじまじとわたし達二人のことを見ている。

 「……わたし、本当に馬鹿だったわ――」