『天使の翼』第7章(27)
わたし達の反応がそうさせたのか、ジェーンも、自分で自分の発言に驚いたように、周囲を見回した。わたし達は遮音装置の効いたボックス席の中で話していたが、ジェーンは自然と声を潜めて――
「こんなこと他の誰にも言ったことないわ……なんだか変な気持ち……何故チャールズさんとシャンタルさんに言う気になったのか――」
わたしは、シャルルと顔を見合わせた。
「――きっと、ずっと心の中に思い続け、秘めていて、無意識にこの思いを分かち合える人を捜し求めていたのだと思う。……それがあなた達だった――今日会ったばかりの……」
「信用してくれて嬉しいよ」
冗談ともつかずシャルルが言って、コーヒーのカップを上げて見せた。
そこへカフェのウェイトレスが来て、わたし達三人は、ジェーンのすすめるままに、店の今朝のお薦めを注文した。
「人と人とのつながり、関係って、時間とは関係ないのね……」
「同感だ」
シャルルは、相づちを打って、わたしの方を見た。
わたしは、ジェーンの存在も忘れて自然に頬笑み返していた――わたしとシャルルは、お互いにお互いの姿を目にした瞬間から惹かれあっていたのだ……
ジェーンは、そんなわたし達の視線のやり取りを不思議そうに見てから――
「わたしのような若い修道女は、時々、大司教様の政庁にかり出されることがあるんです。それはもう大変な忙しさで――」
わたしとシャルルがジェーンのこの言葉に釘付けとなったのは言うまでもない。覚られないよう、体が硬くならないようにするのが一苦労だ……それにしても、欲しい情報に接近するシャルルの勘の鋭さはどうだ……
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