『天使の翼』第7章(22)

 わたしは、一応納得したものの、もしかしたら、シャルルは、常に無意識下で一連の推論を行っていて、無意識に先を読んだ行動を取っているのではなかろうか?シャルルのことを人間コンピューターとは呼びたくないけれど、彼の先見の明、そして、素早い行動力の背後には、そういったことがあるに違いない……
 わたしとシャルルは、二人して今までに得た手掛かりを再整理してみた。――手掛かり、という名の、切れ易い糸を手繰り寄せ、縒り合わせることによって、どうしても知りたかった真実が、着実に近付いて来ている気がする……特に、ここアクィレイアに来てから、その大きな流れが加速してきたような……


 ⒈ 白い封書の分析
  ① POPSの総支配人のもとに白い封書が残っていないか。
   あれば、その確保。
  ② ①と男爵から借りた白い封書との照合。
  ③ 犯行に使われている白い封書が、数十年以上前の公爵家の
   ものと一致しないか、公爵家御用達の文具商に伝手を求めて
   当たってみる。
  ④ さらに、その封書が、今でも、公式のものとは別途発注さ
   れていないか?
 ⒉ 誘拐された吟遊詩人に関する情報のさらなる分析――特に、
  彼女たちは、どこで連絡船に搭乗したのか(出港地)?

 ⒊ わたしの両親の事故が起きたと思われる年代に、惑星系で起
  きた恒星間連絡船の事故の割り出しと、搭乗者名簿の確認。
 ⒋ スカルラッティ公爵に関する査察庁のファイルの再検討。


 一見些細なことが、隠されていた真実――巨悪を暴くことがありえる、ということだ。――幾人とも知れぬ吟遊詩人に対する犯罪、わたしに対する犯罪、そして、わたしの両親に対する犯罪……