『天使の翼』第6章(27)
わたしは、ちょっと熱めのシャワーを全身に浴びながら、今日歌う歌を愛の喜びの歌にすることを決めた。
一つには、それが、今わたしの心を占めている最も大切な領域三つ――天使の翼・吟遊詩人狩りと両親の消息・シャルルとの恋――の一つだから、きっと、実感のこもった力のある言葉を紡ぎ出せそうだから――
二つには、暗いことが続き過ぎたので、同じような思いをしている人に、束の間でもよいから、人生の喜びを思い出して欲しくて――
三つには、恋の苦しみを歌うことが圧倒的に多い中、独身だという若き男爵殿下に、愛そのものの歌をダイレクトに捧げてみたくて――
……わたしは、交替でシャワーを浴び、軽い食事の席に着いた時、シャルルに今宵の歌のことを話した。
「分かったよ」
シャルルは、にっこりと笑って頷いた。
特別何も説明しなくとも、彼ならギターを合わせてくれるだろう――どんなセッションになるのか、今から楽しみ。そして、わたしが愛の歌を歌いたくなった気持ちも、二人に共通の想い……

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