『天使の翼』第6章(25)

 シャルルが、裸の上半身で、気持ち良さそうにわたしの体を抱いてきた。わたしの首筋に顔をうずめて、しきりと口付けしてくる……彼の鼻の頭がこすれて、ちょっぴりくすぐったい……
 「わたしも裸にして」
 言葉の意味を意識する前に口走っていた。
 わたしは、わたしの裸の乳房を、シャルルのすべすべした胸に押し付けて、彼をきつく抱きしめたかった……彼の肌にこすれる乳首の快感が、圧倒的な予感となって、わたしの全身を駆け巡った……
 シャルルは、ため息をついて、わたしの首筋からうずめていた顔を上げると、わたしの両肩を優しくつかんで、わたしの唇に口付けした。彼は、一瞬わたしの視線を捉えて、笑んで見せてから、視線を落として、わたしの胸元のボタンを一つ一つ外していった。その伏目が魅力的で、わたしはもう我慢できなかった――彼の指ともつれ合うようにして、わたしも、自分で自分の上着のボタンを外し、肩をくねらせて脱ぎ捨てた。
 わたしは、肌着を身に着けてなかった――普段は?――普段は、身に着けていることの方が多い。思えば、シャルルへの思いが募るようになってから、肌着を身に着けるのをやめていた――わたしの体は、わたしの気持ちに正直に、とっくの昔から、シャルルの体を求めていた……

 わたし達は、二人して上半身裸のお互いを見詰め合い、そして、きつく互いを抱きしめた。肌と肌が直接触れ合う感触の中に、わたし達は、強い愛の絆を感じていた――シャルルの引き締まった筋肉の胸にこすれる乳首の先端から、雷に打たれたように快感が迸り、つま先から指先まで駆け巡った――
 わたしは、声を上げていた。
 気付いた時には、わたしは、ベッドに背中を押し付けられ、シャルルが上になって、わたしの顔に口付けの雨を降らせていた。二人とも、まだ下半身は衣服を身につけたままだったけれど、わたしは、自然と足を開いて、彼を迎え入れようとしていた……
 あまり幸せすぎて、心の中から朗らかな笑いがもれてきた。

 「シャルルったら……わたしの王子様……甘えん坊なんだから……」
 「君が好きだ……」
 「あなたみたいな甘えん坊をなんで許してあげているか分かっているの?」
 「それは……」
 「ふふ、可愛いから」
 ……実際にそんな会話があったのか、記憶はあやふやだ。
 「こら!」
 困ったような顔をするシャルルの鼻先を突いて、二人して笑ったのは覚えている。――何故なら、その時、運命の女神が時間切れを宣告したから――
 誰かが、部屋の戸をノックした。
 (残念!おあずけ……)