『天使の翼』第6章(23)

 見詰め返すと、彼の瞳は、熱っぽく、くい入るようにわたしの顔を捉えている……それは、女性が至福を感じる時だ――自分も相手に気がある場合だけれども……
 「君の歌っている姿、とても素敵だ。きりっとして、全身全霊をこめて、聞いている者の心に体全体で訴えかけてくる……」
 「……」
 「一度聴いたら忘れることはできない。言葉では言い尽くせない程個性的で……レコーディングされている訳ではないから、君の歌を聞きたければ、君に会いに行くしかない。君の歌を聞くことは、とても貴重な体験なんだ――」
 「ほめすぎよ」
 シャルルったら、どうしたの?いつもはとても冷静なのに……こんな彼を見るのは、そう、洞窟隊商路で、いたいけな少女が獣の乱射したニードル・ガンに倒れた時、すべてを投げ出して闘おうとしたときだ……
 ……彼が単に頭の切れるだけの男なら、わたしは彼に引かれはしなかったはずだ。彼が、同時にとても熱い感情を秘めた、子供っぽいと言っていいぐらいの純粋なところを持っていたからこそ……
 シャルルが、いつの間にか、彼のほっそりとした指で、わたしの顔の輪郭をなぞっていた……

 「君みたいな強い女性――しっかりと自分を確立した、それでいて柔軟に周囲の状況に対応していける女性……堂々と自分の個性を主張している女性が昔から好きだった……」
 (大変!)