夏と冬、思い出

『ハッシュタグ狂詩曲(#Rhapsody)』第28話
 テーマ:夏と冬、どっちが好き?


 人間は、突出して暑さに強い生物だという。
 人間を含めた恒温動物は、外気温の低い冬でも体温を一定に保つため、たくさん食べて代謝熱を作り出している。だから、暑い時に、この代謝熱をどう逃がすかが問題で、人間はその仕組みがずば抜けているのだ。人間は、大量の汗をかいて、その汗が蒸発する時に大量の熱を放出できる……
 この能力、進化の中で、人類発祥の地アフリカのジャングルがサバンナ化する過程で獲得されたらしい。より暑くなっていく大地を駆け回って、獲物をしとめ、また捕食動物から逃げなくてはならなかったのだ……


 だけど、最近の夏の暑さ、それが原因の熱中症は、気候の変動が、本来暑さに強い人間のキャパシティーをも超えて進行していることの証だろう。
 要は、暑すぎることも、寒すぎることも、人間にとっては最も注意すべきリスクなのであり、しっかり気候変動を監視して、長期的な方策を実践していくことが大切なのだ。
 はたして人類は、本質的に利己的な人間は、利害の対立を乗り越えて気候変動に対処していくことができるだろうか……


 さて、前置きが長くなってしまったが、わたしは、個人的には、暑さに強いと思っている……冬の間は……
 そして、夏の間は、「わたしって、寒さには強いのよね」と思っている。
 ……どっちも苦手なのだ。
 暑いのも寒いのも嫌いだけど、季節に対する好き嫌いは、過ごしやすさだけで決まるものではない。

 

 その季節の風物、自然の表情、そして過去の体験といったものが密接に絡み合って愛着が形成される。


 結論を言ってしまうと、わたしは、夏も冬もどっちも好きだ。どちらにも忘れがたい思い出がある。
 動かぬ証拠があって、わたしの書いているSF小説『天使の翼』には、夏も冬も両方、同じ程度の力の入れ方で描写されているように思う。どちらかが嫌々、ということはない。

『天使の翼』作者:有川慶子




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